小動物臨床獣医師(動物病院)の年収は？開業医年収と給料アップのコツも紹介

小動物臨床獣医師は、獣医師で真っ先にイメージされる動物病院やペットホテルなど、愛玩動物を対象とした業務がメインのお仕事です。

自宅でペットを飼っていた経験や、愛玩動物と触れ合いたい希望から小動物獣医師を選ぶ人も多いのではないでしょうか。しかし、いくら好きで始めたいと思った職業とはいえ、実際にどれくらい稼げるのかは気になるところです。

そこで今回は、小動物獣医師に絞って年収や職業について解説します。年収アップのコツも解説しますので、これから獣医師を目指したい人も転職を考えている人も参考にしてください。

小動物臨床獣医師（勤務医）の年収

小動物臨床獣医師には、すでにある病院で働く勤務医と、自分自身が病院を開く開業医の選択肢があります。セオリーとしては、勤務医として経験を積み、開業医に移行していくのが一般的です。

勤務医の正社員年収と内訳は、以下の通りです。ただ、数値に関しては勤め先や売り上げなどによって変動しますので参考程度にお考えください。

詳しい内容については、次から解説します。

基本給

小動物臨床獣医師の基本給は臨床経験の年数で変わってきます。

動物病院の求人は給料の幅が広く、未経験歓迎で24万からスタートのものもあれば、未経験歓迎でも30万を超えるものまであります。臨床経験の有無によって募集を分けているものもあり、臨床経験5年以上で大体30万近くから50万円までと、求人を出している企業や病院によって幅があるのが現状です。

ちなみに、小動物臨床獣医師の求人は正社員ばかりではありません。アルバイト・パート、派遣といった正社員以外の雇用形態もあり、時給換算で1,500円前後のものが多くなっています。

諸手当

手当の内容は、一般的な企業とあまり変わりません。交通費補助や有給の他に、所定残業手当が月額計算の時点で付いている求人が多いです。提示されている残業時間は、20～40時間程度が平均でした。繁忙期と閑散期を分けて記載している求人もあり、常に残業が発生するわけではないものがほとんどですが、詳細については各求人募集で確認した方が良いでしょう。

動物病院の求人では、個人病院でも福利厚生がしっかりと整っているものが多く、健康保険や労災保険など、一通りの保険が備わっています。

ボーナス・その他

ボーナスは年2あるところが多いのですが、夏は1ヶ月分、冬は2ヶ月分のように決まった金額ではなく、業績によって変動します。ここは安定したボーナスが期待できる公務員獣医師やNOSAIに所属する大動物獣医師と違うところでしょう。

業績によってはボーナスが全く支給されないケースもあり、小動物臨床獣医師のボーナスについては「業績による」ところが大きいです。

動物病院開業医の年収

小動物臨床獣医師は、経験を積むと開業医となるケースも多いです。開業医になれば収入が600〜1,000万以上となる可能性があります。開業医の平均としては、600〜800万程度が相場（引用：船井総研 動物病院経営.com）です。開業医の収入は、立地や患者数によって大きく差が出るため、成功すれば1,000万以上も夢ではないでしょう。

しかし当然のことながら、100%成功する保障はありません。また、イチから医療機器や物件を手配する必要もあり、初期投資としてはおおよそ3,000万円程度は必要な見通しです。

店舗開業と同じく収益化できるのは開業から数年後であり、初期は融資やローンの返済に充てることが多くなります。そのため、ある程度の貯蓄がある状態で開業するのが一般的です。

男女別の獣医師年収

令和5年の厚生労働省の調査によると、男性と女性の年収は以下の通りです。

出典：令和5年賃金構造基本統計調査（職種）第１４表 職種（小分類）、性、経験年数階級別所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額（産業計）規模10人以上

女性のほうが月給も賞与も低く、男女で比べると100万円以上の差があります。ただし、上記データは獣医師全体の数値であり、小動物獣医師に限定した数値ではありません。

同データでは、経験年数別に労働者数が分かれて記載されています。女性獣医師は、経験年数1~4年が最も多いのに対し、男性獣医師は15年以上が最も多いです。つまり、女性獣医師は5年以内に退職する人が多いことも分かります。

獣医師は、経験年数が上がれば給与も上がりやすい職業のため、女性のほうが低い原因には年数が浅いことも考えられるでしょう。

日本の平均年収との比較

日本の平均年収は、令和4年度の国税庁による民間給与実態統計調査の結果では、正社員の平均年収は523万円と記載されています。

小動物獣医師の年収と比較すると、臨床経験5年以上と同等と言えるでしょう。正社員に限定しない場合の日本人の平均年収は458万円とされていることから、獣医師のほうが全体的には給料は上と言えそうです。

小動物臨床獣医師の年収が低いと言われる2つの理由

実際には平均年収よりも上であるものの、小動物獣医師の年収は低いと言われています。その理由は、大きく2つが考えられるでしょう。

• 医療系職業のなかでは給料が低い
• 業務内容が給料と見合っていない

ここからは、2つの原因について詳しく解説します。

医療系職業のなかでは給料が低い

小動物獣医師が属する医療系職業のなかでは、獣医師の年収は医師、歯科医師に次いで3番目です。しかし、金額で比べてみると、1位の医師は1,200万以上の年収を得ており、歯科医師でも約890万円の予想となっています。

医療職では3位と言っても2位とは300万近い差額があり、同様の仕事内容と考えると低いと言わざるを得ないでしょう。ただし、この調査での獣医師のサンプル数は圧倒的に少ないため、参考程度に留めておいてください。

参考：令和5年賃金構造基本統計調査（職種）第１４表 職種（小分類）、性、経験年数階級別所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額（産業計）規模10人以上の男女計

業務内容が給料と見合っていない

小動物獣医師は、企業に勤務する一般社員と比べると体力を求められる仕事です。言葉の通じない動物を相手にすることは気力を消耗しやすく、危険とも隣り合わせとなります。また命を預かる職業として幅広い知識や経験を求められ、その重圧も大きなものがあります。

さらに職場環境によってはライフワークバランスを維持できないような、長時間勤務を課される可能性も高いです。加えて、獣医師になるための苦労は、医師とあまり変わりはありません。にもかかわらず、年収で大きな差がついてしまうのです。

そのため、日本人の平均給料よりも高くても業務内容を考えると給料とは見合っていないという意見も多く挙げられています。

小動物臨床獣医師の概要・特徴

ここからは、小動物臨床獣医師の職業について以下の概要を軸に詳しくご説明します。

• 働く場所
• やりがい
• 問題点や課題

職業選びの参考にしてください。

働く場所

小動物獣医師として働くのは、多くは動物病院と考えているかもしれませんが、そうではありません。近年のペットブームと相乗して愛玩動物が関わるような場面は増えており、職場の選択肢も増加しています。

たとえば、ペットと一緒に宿泊するようなホテルや、ペットホテル、ペット専用のトリミングサロン、調教訓練所なども小動物獣医師の職場候補です。

また、病院に来院するのではなくホームドクターとして飼い主の自宅へ訪問するような訪問専門クリニックも増えています。

条件もさまざまあり、土日祝は完全休みや、非常勤獣医師、週3日〜でも可能な職場など、働き方も柔軟に選びやすくなっている傾向です。

やりがい

小動物獣医師のやりがいは「動物が健康になり、動物も家族も喜んでくれること」が多く挙げられます。自分の今までに習得した知識や技術を活かして治療が成功し、ペットが元気になった時、心の底から安堵した飼い主から感謝の言葉を掛けてもらえる機会が多くあります。また、動物相手では言葉が通じないからこそ治療が成功した喜びは一際大きくなります。

問題点や課題

小動物獣医師の問題点や課題は、労働環境の整っていない職場になりがちな点と、飼い主や同僚とのコミュニケーションの難しさです。

現場では、トータルで動物患者の治療を行います。人間でいう専門クリニックはよほどの大病院でない限りは基本的にはなく、対応する症例の数は膨大です。

職場によっては拘束時間も長くなりがちで、そのため退職者が出てしまう場合もあります。そのため人員不足の補填が間に合わず、残った獣医師の負担は増える負のスパイラルが起きがちです。

小動物臨床獣医師の業務内容

小動物獣医師の業務内容は、ペットのトータルケア・治療と言えます。選んだ職場によって対応範囲は変わりますが、昨今では治療・ペットサロン両方を兼用しているクリニックも増加している傾向です。

病院によっては、レントゲン撮影、手術対応なども行います。主なペットは犬・猫が多いですがどちらかのみに特化しているクリニックもあります。ペットを幅広く受け入れるクリニックであれば、ウサギやハムスター・フェレットなどの他動物も診察するかもしれません。

選んだ病院によって対応範囲や対象となるペットは変わるので、求人情報を熟読し、職場の雰囲気を知るためにも病院内を見学したうえで決めたほうがよいでしょう。

小動物臨床獣医師の年収を上げるコツ

小動物獣医師の仕事は大変なことも多いですがやりがいもある仕事です。ただ、できることならば、給料が少しでも高い職場で働きたいと思うのは当然のことだと思います。そこでここからは、年収を上げるためにできることや上げるコツをご説明します。

開業医として独立する

「動物病院開業医の年収」でも述べた通り、小動物獣医師の年収は勤務医と開業医で大きく変わります。高い年収を狙うなら、開業するのが最も近道と言えるでしょう。

小動物獣医師の求人のなかには、「独立開業者輩出経験あり」や「独立支援あり」と記載のある求人もあります。そういった職場は、知識を増やすためのセミナー補助や、多くの症例に携わり、スキルアップをしやすい点がメリットです。

いつまでに独立開業すると目標を立て、逆算して業務に取り組むことで日々の業務も密度を濃くして過ごせるでしょう。

基本給の高いところで働く

小動物獣医師の求人には30〜50万という上限の高い給与設定がなされている求人もあります。また、はっきりと「残業代は全額支給」と記載されている求人については働いた分だけ給料が支給されるのでより多めに受け取れることになるでしょう。ただし、求人の条件については気になる部分はしっかり確認することをおすすめいたします。

経験年数を上げる

獣医師の年収平均を見ると、年齢・経験年数が上がるとともに順調に上昇しています。賃金構造基本統計調査の年齢別データでは、20〜24歳の年収が438万程度に比べると、50歳以上になると1000万円以上が平均年収となります。

また、初任給で安かった場合にも、転職をすることで基本給を上げられる可能性は大いにあるでしょう。獣医師の仕事は、獣医師免許さえ所持していればブランク歓迎も多いので、長期のキャリア形成はしやすいです。

ひとつの職場に留まる必要はないので、キャリアステージに合わせて職場を変更することで悩みを解消できると同時に給料も上げられるかもしれません。

まとめ

小動物臨床獣医師の年収は、仕事内容を考えれば低いという見方もありますが、求人によっては50万近い月給を提示しているものもあり、正にピンキリと言えます。経歴を積み上げるほどに給料アップが期待でき、ライフスタイルによって働き方も柔軟に選びやすいです。

とはいえ、1人で転職活動をしても望む結果が得られない危険性はあります。それほど小動物獣医師の求人は内容の差が大きいのです。また、一見理想的な求人でも、長時間残業や職場の人間関係など、落とし穴がないとも言い切れないでしょう。

情報収集を確実にするには、職業のプロと相談しながら進めるのが確実です。この記事を参考に、獣医師としてのライフプランを考えてみてはいかがでしょうか。

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