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大動物獣医師(産業動物臨床獣医師)の年収は?仕事内容や給料アップのコツについて解説

大動物獣医師(産業動物臨床獣医師)の年収は?仕事内容や給料アップのコツについて解説

獣医師として働く選択肢の1つに大動物獣医師があります。産業動物獣医師とも呼ばれる働き方ですが、一般的にイメージされやすい小動物対象の獣医師よりもあまり知られていないことも多い分野です。しかし、大動物獣医師のやりがいは大きく、実際に働いてみれば自信を持って取り組んでいる人は多くいます。

そこで今回は、大動物獣医師について年収や働き方、業務内容、さらに年収を上げる方法についてもお伝えしますので、職業選びの参考にしてください。

大動物獣医師の年収

大動物獣医師の年収は新卒を含めると大体300~500万程度の幅となり、手当や年齢によって大きく異なると言えるでしょう。

情報をまとめると以下の通りです。

新卒 中途・経験者
月額合計(獣医師
手当含む)
240~264万円 336~383万円
賞与 90万~99万円 126~144万円
年収予想 330~363万+諸手当 462~527万円
+諸手当

基本的な毎月発生する給料、残業手当や危険手当などの各種手当、一般的な会社にも支給されているボーナスの3つです。

各項目については、この後から解説します。

月額金額

基本給は大動物獣医師個別の公的なデータが見当たりませんでしたので、公開されている求人情報やTYLのデータから平均値を算出しています。

牧場や動物園、水族館での獣医師募集の新卒採用の場合の平均月収は22万~25万程度、中途採用や経験者であれば、経験年数や年齢を加算して考慮され、大体25万~40万程度の求人が多く、給与の内訳にはいずれも獣医としての職務手当が含まれています。

諸手当

その他の諸手当については、勤務先によってさまざまです。一般的な残業手当、役職手当に加え、職場によって家族手当や車両手当、寒冷地手当など、独自の手当があります。

さらに、昨今の獣医師待遇の改善により初任給調整手当が付く場合も多いです。金額は3~5万円程度で、支給期間は着任後15ヶ月など施設によって異なります。諸手当は職場によって金額が大幅に異なるため、今回の集計では含めていません。

ボーナス・その他

ボーナスは年2回が多く、平均的には4.5ヶ月分程度と思われますが、求人によっては1.5ヶ月分のものもあり、一概には言えません。

大動物獣医師の概要・特徴

大動物獣医師の概要・特徴

大動物獣医師は経験を重ねるほどに給料が上がっていきます。また、大動物獣医師は犬や猫などのペットを診療する小動物獣医師に比べて人手不足な傾向があります。(参考:農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課令和6年3月「獣医事をめぐる情勢」

大動物獣医師が対象とする動物は、牛・豚・羊といった産業動物や、動物園にいるキリンやゾウ、水族館にいるアシカや大型魚などがあります。治療や診察がメインの小動物獣医師と比べると、業務内容が多岐にわたるのが大きな特徴です。その分のやりがいがあります。

ここからは、具体的に大動物獣医師になりたいと考えた時に必要な情報を説明します。

  • なり方や必要な資格
  • 働く場所
  • やりがい
  • 問題点や課題

順番に解説しますので、参考にしてください。

なり方や必要な資格

大動物獣医師になるのに必要な資格は獣医師免許のみです。

新卒ではなく中途や経験者として求人に応募する場合には、獣医師免許に加えて臨床経験があるかを問われることもあり、必要となる臨床経験年数は概ね2年以上が多いです。

ほかにも、診療所や産業動物を対象とした牧場勤務などは普通自動車免許を取得しているのかが条件な場合もあります。なりたい職場によって必須かは異なりますが、そういった職場を希望する時には勤務前の取得見込みでも応募は可能なため、合宿による短期取得なども視野に入れましょう。

働く場所

大動物獣医師として働く勤務先は、主に3パターンあります。

1つ目は、NOSAI(農業共済組合)に所属している診療所や組合本所に所属し、共済に加入している牧場などの家畜、産業動物を飼育している場所に往診、もしくは派遣されるパターンです。または、施設が研究機関となっていることもあります。

2つ目は、運営している牧場の獣医となるパターンです。勤務先を移動することはほぼなく、牧場や会社ごとに独自の手当などがある場合があります。

3つ目は、動物園や水族館に所属するパターンです。動物園と水族館は、飼育している動物に違いはあるものの、仕事内容自体は似ています。対応する生物の好みや、これまでの経験を加味して挑戦してみるとよいでしょう。

やりがい

大動物獣医師の仕事は、動物病院を中心とした小動物獣医師にはない仕事内容が多く、大型の産業動物ならではの食の安全や、水族館や動物園の来場客といった多くの人々への喜びを提供することにつながっています。

牧場や産業動物が対象であれば、関わる農場や牧場の人々から直接感謝の言葉をもらえることもあります。畜産農家にとって、家畜の安全性を確保することは収益にも直接つながり、獣医なくしては商売が成り立たないと言っても過言ではありません。

また、家畜や食の安全を守ることは多くの人々を守ることにもつながるため、責任も大きいですが、その分やりがいを感じることができます。

問題点や課題

大動物獣医師の問題点として挙げられるのは、認知不足による慢性的な人手不足や、対象動物に対する深い理解が必要な点です。

日常的に身近な存在である犬・猫などペットを対象とした小動物獣医師と比べると、大動物獣医師の仕事は日常からかけ離れています。そのため、令和6年の農林水産省による調査においても、獣医師全体のうち小動物獣医師が4割いるのに対し、大動物獣医師は約2割程度しかいません。問題点に対応すべく、修学資金の給付や、臨床実習の強化をしています。
参考:農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課令和6年3月「獣医事をめぐる情勢」

また、産業動物を対象とする場合、対応する動物はたいてい一種類が基本的です。多くの動物を見ませんが、その分担当する動物に対しては全ての業務を担当しなければなりません。
参考:日本獣医生命科学大学 さぴあお仕事カタログ

動物の体格も大きいことから体力面での負担も大きく対応が難しかったり、農場や牧場を経営している方々の医療への理解が得られないことなど課題はたくさんあります。

大動物獣医師の業務内容

大動物獣医師の業務内容

大動物獣医師として働く時の業務内容は、4つに分けられます。

  • 産業動物を対象として安全な繁殖活動をサポートする「繁殖管理」
  • 健康状態を観察する「衛生管理」
  • 飼育する動物に合わせた適切な肥料を作る「肥料設計」
  • 小動物獣医師と同じく動物たちの「診断・治療」

「診断・治療」以外の業務は、大型動物ならではの部分と言えるかもしれません。それぞれについて、この後から詳しく説明します。

繁殖管理

産業動物は主に人々に食を提供しており、そのためには安定的な供給が必要不可欠です。動物の身体を知りつくしている大動物獣医師にとって、繁殖管理も大切な仕事です。

繁殖管理では牧場や酪農家からの依頼を受けて、雌が無事に産める状態の体かを検査します。検査方法は直接の触診やエコー検査があり、頭数が多い場合にはエコー検査が一般的です。また自然分娩だけでなく、派遣先によっては人工授精や受精卵の移植を行います。出産後に子が虚弱な状態であれば、栄養をコントロールして生命を安定させることも必要です。

母体に関しては周期を把握したうえで管理し、分娩する間隔を一定に保つことも仕事に含まれます。

衛生管理

出産時だけでなく、動物が正常に育つかを見守ることも仕事です。依頼を受けて健康観察に行ったり、常日頃からの体調チェックをしたりなどして動物たちの成長を支えます。

しかし、ただの健康管理とは侮れません。特に多くの生物と一緒に過ごす環境では、一頭の病気によって爆発的に感染が広まり、施設全体の重大なダメージとなる可能性もあります。触診や血液検査だけでなく、時には超音波やレントゲンなどの機器を使用し、見逃さないようにしなければなりません。

飼育設計

水族館や動物園では、餌やりは主に飼育員が担当しますが、産業動物を担当する場合は体を診るのみならず食の管理も行います。動物が何を食べているかで、健康状態や肉質にも変化があるからです。

施設によっては血液検査などの各種検査結果を元に、足りない栄養素などがあれば加える成分を分析し、肥料に混ぜていきます。肥料を用意するには経営者の高額な資金が必要です。栄養によって出荷される商品も変わるため、綿密に打ち合わせを繰り返して方向性を決定するコミュニケーション力が要求されます。

診断・治療

小動物獣医師と同じく、病気の傾向があった時に診察し、病気を診断・治療を行うことも大動物獣医師の仕事です。

小動物獣医師が担当する愛玩動物と違い、大動物獣医師が担当する動物たちは施設の収益を担っています。牛であれば「立てなくなった時点で経済価値がゼロになる」とも言われており、関節炎や脱臼、骨折などの運動疾患1つでも気を抜けません。

大動物獣医師で取り扱う動物はそれぞれ特徴も異なるうえ、呼吸器から子宮、運動器といった全ての器官や、あらゆる疾病に対応する必要があります。そのため、牛であれば牛専属、馬であれば馬専属のように、1種類を専門的に対応するのが一般的です。

大動物獣医師の年収を上げるコツ

大動物獣医師は経験年数を重ねれば給料が上がりやすい職種ではありますが、スタートの時点でなるべく高い給料を受け取りたい人も多いのではないでしょうか。

そこで、ここからはどうすれば大動物獣医師の年収を上げられるのかについて説明します。考えられる方法は、主に以下の4つです。

  • 基本給の高いところで働く
  • 経験年数を増やす
  • 開業医として独立する
  • 知識を活かして副業をする

状況に合わせて、できそうなものは取り入れてみましょう。

基本給の高いところで働く

求人票を見比べれば分かりますが、基本給は施設によって異なります。特に獣医師の場合に大きく違うのは、初任給調整手当と獣医師手当の2つです。

獣医師手当は、専門職であれば基本的に付きますが金額は統一されていません。また、初任給調整手当は付かない職場もまだあるうえに、付く期間も異なります。

大動物獣医師の求人票を見る時には、基本給だけでなく手当にも注目しましょう。

ほかには、JRAといった基本給が高い職場を最初から選ぶのも1つの方法です。JRAの「日本中央競馬会(5010405002453)の役職員の報酬・給与等について」によれば、平均年齢42歳にして年収は1,000万円以上とされており、大動物獣医師のなかではかなり高額が期待できるでしょう。

経験年数を増やす

獣医師のような専門職は、経験年数が上がれば基本給と賞与がかなり上がります。とはいえ、1つの職場に長く勤めなければならないと考えると難しいと考える人もいるでしょう。しかし、経験年数を増やすのに1つの職場に留まる必要はありません。

高額な退職金を貰うには同じ職場で働かなければいけませんが、獣医師免許に関わる仕事で転職をした場合には経験年数はリセットされないのです。

大動物獣医師は、対応する動物を一通り理解した後は別の動物の専門性を高めたり、研究分野の知見を広めたりするなど、幅広い多様性がある仕事です。

常に需要があるため、出産や介護といったライフイベントがあったとしても復職もしやすく、経験年数を伸ばしやすいでしょう。

開業医として独立する

小動物獣医師に多い話ではありますが、大動物獣医師にも独立開業はない話ではありません。大動物獣医師で経験を積んだ後に、産業動物専門の病院としても開業できますので、直接経営者から報酬を受け取ることが可能です。

ただし、専門知識はもちろん、大動物専用の専門道具は購入する必要があります。さらに、診断施設、家畜人工授精所といった申請書類も用意しなければなりません。

知識を活かして副業をする

大動物獣医師の専門的な知識を活かせば、記事監修者や講師といった副業もできます。ペット需要が増えていることもあり、動物に関する知識を持った監修者を探しているメディアも少なくはありません。専門職の監修者であれば、長時間を要せずに高額な報酬も獲得可能です。

ほかにも、時間を気にせずに取り組める投資や株などの資産運用もおすすめです。2024年1月には積み立てNISAの金額規制が緩和されており、運用を始める人が増えています。

獣医師の年収が低い理由!初任給から地域や経験年数による違いを解説

転職に失敗しないために

転職に成功したか失敗したかは、自分が転職後に後悔しないかによると言えるでしょう。やりがいを求めて転職をし、前の仕事よりも充実した日々を過ごせているのであれば、給料は下がっていても成功したと考えられます。

後悔しないためには、自分が転職をした時に何を求めているか、前職ではなぜ転職したいと考えたかを冷静に棚卸ししてから、転職後に叶えたい理想に優先順位を付けて転職活動に臨む必要があります。

獣医のなかでも仕事のイメージがしにくい大動物獣医師では、事前情報をしっかりと収集することも大切です。NOSAIの説明会や体験会に積極的に参加し、自分の中でイメージを膨らませてみてください。

自己分析が難しい時には、プロにアドバイスを求めることも有効です。特に転職エージェントは、現場の人しか知らない情報を持っているアドバイザーが多数います。1人で判断せずに相談してみましょう。

大動物獣医師の年収についてのまとめ

大動物獣医師の年収は、新卒か経験者かによって異なります。平均では400~500万程度となっていますが、獣医師の年収は手当の金額に大きく左右されがちです。

獣医師手当、残業手当、初任給調整手当といった金額の大きい手当は必ず事前に確認し、不明点があれば応募時に確認しましょう。また、獣医師の諸手当は手厚い傾向があります。求人を念入りに見比べ、納得できる職場を探してください。

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