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公務員獣医の年収は?獣医の他の働き方や他公務員と徹底比較

公務員獣医の年収は?獣医の他の働き方や他公務員と徹底比較

獣医として働く選択肢には、公務員獣医というものがあります。公務員と言えば安定した収入が魅力の仕事でですが、報酬が高くても仕事内容と給与額が一致していないと感じてしまえば、不満が出てくるかもしれません。そこで今回は、公務員獣医の年収、種類や仕事内容を紹介し、公務員獣医師以外の選択肢や日本全体で見た公務員獣医師という仕事について解説します。

公務員の獣医師とは?その仕事内容となり方を解説

公務員獣医師の年収

公務員獣医師とひと言で言っても、実は2種類の働き方があります。その2つとは、「地方公務員」と「国家公務員」です。まずは2つの働き方について、実際の年収はいくらなのかをご説明しましょう。

なお、公務員獣医師の年収の内訳は月の給料「月給」、年に数回ある特別な給料である「賞与」、残業手当や深夜手当といった、主に時間外労働や特殊な業務に発生しやすい「手当」の3つがあります。

こちらの動画では、公務員獣医師としての年収や、国家・地方公務員の違いについて解説しています。公務員獣医師のキャリアを考えている方にとって、具体的な給与情報が得られる内容になっていますので、ぜひご覧ください。

地方公務員

地方公務員の年収が分かるのは、2024年4月時点の最新データは「令和4年度地方公務員給与実態調査」です。このうち、区分7に分類される「薬剤師・医療技術職」に該当することが総務省の「地方公務員の職種について」で説明されています。

※職種区分の定義
国の医療職俸給表(二)の適用を受ける者に相当する職員及び獣医師(獣医師としての資格を有し,保健所,家畜保健衛生所等において現実に獣医師としての本来の業務に従事している職員に限る。)(企業職の職員を除く。)
引用:地方公務員の職種について

地方公務員給与実態調査の第5表によると、基本給に諸手当を足した金額である給与月額合計が392,810円であり、12ヶ月分を掛けると4,713,720円となります。これに賞与を合わせた金額が地方公務員獣医師の年収です。さらに、諸手当として期末手当と勤勉手当を足した金額が1,463,760円であるとの記載が確認できました。

以上のことをまとめると、4,713,720円+1,463,760円=6,177,480円が令和5年度の地方公務員獣医師の年収であったと計算できます。

なお、細かい都道府県別を算出したい場合は同データ記載の内容をご利用ください。

国家公務員

国家公務員の年収を確認するには、地方公務員とは別のデータを参照する必要があります。

国家公務員獣医師は「令和5年 国家公務員給与等実態調査」の医療職俸給表(二)に該当します。

俸給とは、一般的な仕事で言う基本給のことです。俸給に賞与や手当が合わさって平均月額給与額が算出されています。これを12ヶ月分掛けることで年収の算出が可能です。データによると俸給は313,583円、平均月額給与額は357,899円で、給与額を12ヶ月分掛けると4,294,788円、約430万円となります。

国家公務員のボーナスは年によっても変動しますが、大体は俸給の4~4.5ヶ月分と言われています。以上の内容を元に計算してみると、

【ボーナス】
313,583×4.5=1,411,123円(少数切捨て)

【ボーナス含めた合計】
4,294,788+1,411,123=5,709,911

ただし、国家公務員は所属年数や仕事内容によっても手当も賞与も大きく変わりますので、あくまで参考程度に考えておいてください。

公務員獣医としての働き方の選択肢

実際の年収を見てどのように公務員獣医になれるのか、気になる人もいるかもしれません。そこでここからは、どのように公務員獣医になれるのか、必要な資格や勤務する場所、仕事内容など、具体的な中身についてご説明します。

地方公務員

地方公務員は、各都道府県にある自治体が管理する施設で職員として働きます。なるための方法は新卒と中途・転職で少し異なりますが、公務員試験の合格は必須です。仕事内容は施設に所属して働くか、畜産農家の往診をするのかによって変わります。

なり方や必要な資格

地方公務員になるルートは、新卒で目指すか中途・転職で目指すかで分岐します。新卒で目指す場合、まず応募する資格に該当しなければできません。卒業までに獣医師免許取得のための試験に合格し、免許を所持する見込みが必要です。

一方中途・転職の場合、公務員試験に応募するハードルは獣医師免許を取得していることのみです。年齢制限も大幅に緩和されており、応募資格を有する年齢は、59歳以下、もしくは年齢制限自体がないケースもあるようです。

応募後は地方公務員試験を受験します。内容自体は一般的な企業のSPIや論文などですが、中途・転職で希望すると2次試験が免除されるケースも。試験内容自体も緩和されているとのことです。

働く場所

地方公務員獣医師は、公衆衛生獣医師と家畜衛生獣医師に分かれています。地方公務員獣医師が働くのは、主には検疫所や検査所、各都道府県にある研究センターや技術センターです。地方農政局や国立の研究機関などもあります。働く場所はあくまで一例であり、配属される地域によって施設の役割は大きく異なります。

仕事内容

公衆衛生獣医師を選んだ場合、主に行うのは検査や調査がメインです。家畜伝染病予防法の内容に基づき、伝染病を検査したり疾病の細菌検査を行ったりします。検査する内容は鳥インフルエンザをはじめさまざまです。

また、狂犬病の予防や動物愛護団体を担当する職員なども公衆衛生獣医師に含まれます。家畜検査や動物愛護の仕事であれば、獣医師のスキルも活かしやすいでしょう。

家畜衛生獣医師を選んだ場合、牧場や動物公園、研究センターなどで公衆衛生獣医師と同じような検査を行います。それに加えて、畜産農家を巡回して指導を行ったり、現地調査を行ったり、受精卵移植の普及啓発活動を行ったりと仕事内容が多いです。

一般的な仕事に例えると、内勤が多いのが公衆衛生獣医師、外勤や巡回を多くするのが家畜衛生獣医師と言えるでしょう。

獣医師の年収が低い理由!初任給から地域や経験年数による違いを解説

国家公務員

国家公務員獣医師は、主に農林水産省や厚生労働省など、各省庁に勤務する仕事です。勤務先は各庁もしくは管轄している機関が多くなります。国を守る仕事として、獣医師の指標となる法律法令に関する仕事や、輸入・検査対策に対する施策の企画を立案し実行するなど、国の根幹を支える業務内容と言えるでしょう。

なり方や必要な資格

公務員獣医師になるのに必要なのは、地方公務員獣医師と同じく獣医師資格を既に取得しているか、取得する見込みがあることのみです。

一次試験で専門知識や基礎能力を問われ、2つの総合的な点数で判断されます。ちなみに、英語技術がある場合はTOEICやTOEFL、IELTSいずれかのスコアに応じて加算点数があります。二次試験では、政策課題に関するグループディスカッションや面接を行います。合格できた人は、晴れて公務員獣医師として農林水産省へ勤務が可能です。

働く場所

公務員獣医師が働くのは、主に農林水産省か厚生労働省です。農林水産省とひと言で言っても、実は多くの部署に分かれています。獣医資格を持つ人が勤務するのは、消費・安全局もしくは畜産局のいずれかのケースが多いようです。

仕事内容

公務員獣医師は、どこの部署に配属されるかで仕事内容は変わります。

消費・安全局であれば、仕事の主な目的は畜産物の安全性確保や衛生の向上です。動物用の医薬品・肥料の安全性のために基準を設定したり、獣医師に関わる政策を実行したりします。また、国内の伝染病の防疫や、海外からの疾病が侵入しないように防止する策を実施することも重要な仕事です。

畜産局であれば、仕事の目的は生産振興・経営安定の対策、畜産物の流通合理化、消費拡大であり、どちらかというと畜産農家や牧場といった現場を直接支える仕事と言えるでしょう。

経営を圧迫しないために自給肥料の生産を増やし、人員不足に対応できるための機械化を促進することなどを通して、経営者を支えています。他にも、流通コスト削減や消費拡大を促すための施策を立案・実行することも。現場で働く人々の攻守どちらも担っている業務と言えますね。

獣医の公務員以外の働き方と年収は?

獣医の公務員以外の働き方と年収について

公務員が良いか悪いかを知るには、ほかの働き方についても理解を深めなければ本質は見えません。そこでここからは、公務員以外の現場で働いた際の働き方や年収を説明します。

公務員と同じような職場もありますが、開業医や勤務医として動物病院で活躍する方法や、企業の運営する施設で働く方法など、公務員と比較しどのように違うかをイメージをしてみてください。

動物病院

動物病院では、主に人々が飼育するペットの診察・治療を行います。飼育するペットと言えば犬や猫を想像しがちですが、うさぎや爬虫類、牛や馬などのいわゆる産業動物を担当する獣医師もいます。

年収は既にある動物病院への勤務医であれば大体300~450万円程度です。公務員獣医師と比べると、基本的には低い年収と言えるでしょう。

ただし、独立して開業した場合、成功すれば1,000万円以上も不可能ではありませんが、動物病院を軌道に乗せる病院経営は容易いことではないので、独立したは良いがなかなか集患出来ず、閉院するといったケースもありますので失敗するリスクも大きいです。

水族館・動物園・公営競馬

水族館や動物園、公営競馬で働く場合、それぞれの施設で飼育している動物の健康管理や診療・治療を行います。この3つの施設は自治体が運営している場合があり、その例に当てはまるのであれば区分は地方公務員獣医師です。

生きている間の健康管理も大切な仕事ですが、なんらかの理由により亡くなってしまったときにも病理解剖を行って原因を追求します。ほかの動物が同じ要因で亡くならないように予防するのも仕事の1つです。年収は大体400万円~600万円の間程度と動物病院より割高な傾向です。

動物園に勤務する獣医師の平均年収はどのくらい?

企業獣医師

民間企業に勤めることも、選択肢の1つです。獣医の知識を活かしてペットフード関連、動物の医療機器関連、ペット医療機器の日本での使用に関する審査会社など、勤務先は多岐にわたります。

なかには、獣医の知識を活かした専門的観点からのアドバイスやアプローチができることから、動物商品を扱う会社での営業に就職する人もいます。勤務先によって給料はさまざまですが、高額な年収を得たいのであれば製薬会社や特殊法人であるJRAが人気です。

年収は、民間的企業であればマネージャークラスや部長などその企業の規模により変わってきますが、おおよそ400~800万円程度、JRAは650万~1,200万程度(JRAが公表した令和3年度の職種別支給状況)とされています。

ただし、JRAは特に馬専門獣医を目指す学生などからも人気があり、倍率はかなり高くなっているので狭き門といえるでしょう。

獣医の年収は日本の平均年収と比べると高い

日本全体の平均年収は、国税庁の行った民間給与統計調査で発表されています。最新データが令和4年のため、年度によるズレはありますが、データによると男女を合計した年収は461万円とのことです。

獣医全体の年収は、令和5年賃金構造基本統計調査の第1表によると約580万円でした。比較してみると、平均的な年収と比べれば100万円近くは多くなります。

ただし、平均と給与が高いと言っても獣医の仕事は残業時間や仕事内容もハードになりやすいです。見方によっては「割にはあっていない」と感じている人も一定数います。

獣医の年収は経験年数で大きく異なる

獣医の年収は経験年数で大きく異なる

公務員獣医師は、一般的な獣医と比べると給料が低いケースもあります。それでは、一度就職するとずっと低いままかと言うとそうではありません。

獣医の年収は、経験年収によっても大きく違います。未経験のうちは約415万円程度ですが、15年以上になれば約2,269万円と大幅にアップします。

経験年数が上がれば独立開業もしやすいため、長く続けるほどに給与は上がる見込みが高い職業と言えるでしょう。

経験年数 所定内
給与
年間
賞与
合計額
(年収)
0年 306.2 109.7 415.9
1~4年 317.7 618.7 936.4
5~9年 386.1 1109.2 1495.3
10~14年 446.9 727.7 1174.6
15年以上 519.5 1749.9 2269.4

※単位は千円

出典:令和5年賃金構造基本統計調査 職種(小分類)、年齢階級、経験年数階級別所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)(職種)第10表 企業規模(10人以上)

獣医の年齢別年収の違い

獣医全体の給与を年齢別に見てみると、20代では約415万円に対し、最高額となる55~59歳では約2,600万円となっています。

その他の年齢別年収は以下の通りです。

年齢 現金
給与額
賞与、
特別給与
合計金額(年収)
20~24歳 360.5 54.2 414.7
25~29歳 366.4 483.2 849.6
30~34歳 412.1 899.8 1311.9
35~39歳 502.0 1053.6 1555.6
40~44歳 595.1 1301.5 1896.6
45~49歳 603.9 1249.3 1853.2
50~54歳 700.9 1696.1 2397.0
55~59歳 818.7 1832.4 2651.1
60~64歳 464.2 968.3 1432.5
65~69歳 663.2 0 663.2
70歳~ 400.0 0

※単位は千円

出典:令和5年賃金構造基本統計調査 職種(小分類)、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計) 企業規模(10人以上)

上記の表を見て分かるように、給与はもちろんですが、賞与にはかなり大きな差があります。特に40代以降から顕著に増加する傾向です。

また、65歳以降の賞与が発生しないのは、正規職員ではない働き方が増えるからかと思われます。

公務員獣医師のまとめ

公務員獣医師には、地方公務員獣医師と国家公務員獣医師があります。年収だけで見れば開業医や民間企業の働き方よりも少ない時もあり、魅力的に見えないかもしれません。しかし、公務員として国の食や安全を担う業務に直接関わることができ、やりがいも大きな仕事と言えるでしょう。

また、公務員獣医師は人手不足な背景もあるため、比較的年齢を考えずに転職しやすいです。今までの知識を活かせる職場であり、セカンドキャリアとしても人気があります。一概にどちらが良いとは言えませんが、この記事を参考にしながら自分のキャリア設計を今一度考えてみてはいかがでしょうか。

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