獣医師の年収が低い理由!初任給から地域や経験年数による違いを解説
獣医師の年収は一般的な認識と異なり、決して高いとは限りません。
本記事では、獣医師の初任給の実態と地域や経験年数による年収の違いと獣医師の年収が高いとは言えない理由を解説していきます。
目次
獣医師の仕事内容とは
獣医師の仕事内容は、私達人間が想像する以上に幅広いものです。一般的な動物医院でペットの診療をするイメージが強いですが、獣医師の業務範囲はこれだけにとどまりません。家畜の診療、野生動物の保護、食肉の検査、疫学的研究など、動物と人間の健康に関わる多岐にわたる業務を行っているのです。
獣医師の主な業務
獣医師が日々行っている業務は多種多様です。
一つ目は、ペットを中心とした家庭の動物の診療です。犬や猫などペットの健康チェックや病気の診断、予防接種の施行、手術などが主な業務となります。また、病院によっては飼い主に向けてのペットの健康管理サポートや、行動療法のアドバイスなども行います。
二つ目は、家畜の診療です。畜産業者と連携し、家畜の健康状態を監視し、また必要に応じた予防接種や、患病時の治療、出産の介助などを行います。特に、家畜の病気は人間社会に大きな影響を及ぼすこともあるため、役割はとても重要です。
三つ目は、野生動物や動物園の動物たちの診療です。ここでは特殊な知識や技術が求められることもあります。野生動物の保全活動や、生態の調査も行います。
獣医師に必要なスキルと人間性
獣医師が身につけておくべきスキルは、まず第一に、動物の体の構造や働き、病気のメカニズムなど、専門的な知識と技術です。これらを獣医学部で学び、獣医師国家試験を通じて専門的な知識および技術があると証明します。
次に、コミュニケーション能力も重要です。実際に診療に当たる中で、動物の症状や患部を直接聞くことはできません。そのため、飼い主と効果的にコミュニケーションをとり、動物を理解しようとする力が求められます。また、飼い主へ分かりやすく伝える力も大切です。
さらに、知識や技術だけでなく、感情的なサポートも獣医師の役割です。ペットという家族の一員の健康状態、時には生死について飼い主と向き合わなければならない時があります。そうした瞬間に、こころに寄り添う能力「思いやり」が求められるでしょう。
以上のように、獣医師の仕事は知識や技術だけでなく、豊かな人間性が重要となる職業です。
獣医師の年収が低い理由
獣医師は高度な専門知識と技術を持つプロフェッショナルですが、その年収は他の専門職に比べて低い傾向があります。以下にその理由を詳しく見ていきます。
専門性の高さと報酬の不均衡
獣医師という職種は、その名の通り、動物の医療を担当する専門家です。彼らが治療する動物は、小さなハムスターや金魚から、大きな犬や猫、さらには農場の動物や動物園の動物まで、非常に多岐にわたります。このような幅広い動物たちを診るためには、それぞれの動物の生態や体質、疾患の特性を深く理解する必要があります。そのため、獣医師は広範な知識と高度な技術を持つ必要があります。
しかし、このような高度な専門性にも関わらず、獣医師の報酬は必ずしも高いとは言えません。人間の医師と比較すると、獣医師の治療対象である動物の命の価値が経済的には低く見られがちであり、それが治療費や報酬にも反映されています。また、ペットオーナーが治療費を抑えたいという要望も強く、高度な治療を行ってもそれに見合った報酬が得られないことが多いのです。このような背景から、獣医師の専門性と報酬の間には大きなギャップが存在していると言えます。
人間の医療との価格差
医療の世界において、人間の医師と獣医師は、それぞれ異なる専門性と役割を持っています。人間の医師は私たちの健康を守り、病気の治療を行う一方、獣医師はペットや家畜などの動物の健康を守る役割を果たしています。しかし、これら二つの職種の間には、経済的な価値観において大きな差が存在します。
人間の医療は、その命の価値や社会的な影響を考慮すると、高額な治療費が設定されることが一般的です。これに対して、動物の医療は、社会的な価値観や経済的な背景から、治療費が低価格に設定される傾向があります。この治療費の差は、人間の医師と獣医師の年収にも影響を与えています。
具体的には、人間の医師は、高額な治療費を背景に、相応の報酬を受け取ることができます。一方、獣医師は、治療費が低価格であるため、それに見合った年収が得られることが難しいのです。この結果、同じ医療の専門家でありながら、人間の医師と獣医師の間には、年収において大きなギャップが生まれています。
このような状況は、獣医師の専門性や労働の価値を正当に評価する必要があるとの声が高まっています。獣医師も高度な知識と技術を持つ専門家であり、その労働に見合った報酬が必要であると考えられます。
獣医療の保険制度の未整備
医療保険制度は、突発的な医療費の負担を軽減するための重要な役割を果たしています。人間の医療においては、多くの国で保険制度が整備されており、病気や怪我の際に高額な治療費が発生しても、保険が一部または全額をカバーしてくれるため、患者の経済的な負担を大きく軽減することができます。
一方、ペットの医療に関しては、その保険制度はまだ十分に整備されていないのが現状です。多くの国や地域で、ペットの医療保険は普及していないか、または存在自体が少ないため、ペットオーナーは治療費のほとんどを自己負担する必要があります。このため、高額な治療や手術が必要となる場合、ペットオーナーは経済的な理由から治療を避けることが多くなっています。
このような状況は、ペットの健康や命を守るための適切な治療が受けられないという問題を引き起こしています。また、獣医師にとっても、治療を行うことができないための収入の機会損失となり、その結果、獣医師の年収が低くなる要因ともなっています。
人間の医療とペットの医療の間には、保険制度の整備度に大きな差が存在しており、これが獣医師の経済的な状況に影響を与えていることが明らかです。ペットの医療保険制度のさらなる整備や普及が求められる中、獣医師の専門性や労働の価値を正当に評価する必要があると考えられます。
症例数と病院経営
獣医師の給与に影響を与える要因は多岐にわたりますが、特に都市部での症例数の少なさと、動物病院の院長の役割が給与水準に大きく関わっていることが指摘されています。都市部では、症例が分散しているため、一人の獣医師が扱う症例数が少なくなりがちです。症例数が給与の算定基準の一つである場合、これは直接的に収入に影響します。一方で、地方では症例数が多いため、獣医師の給与が比較的高く設定される傾向にあります。
さらに、多くの動物病院では院長がプレイングマネージャーとして実務に従事しながら経営も行っているので、その場合は昇給基準などの評価基準が不明確になる要因となり得ます。評価基準が整っていないと、獣医師のスキルや経験が適切に給与に反映されず、結果として低い給与水準につながる可能性があります。
獣医師の給与が低いとされる一因には、地域による症例数の違いと経営と診療の両方を担う院長の役割に起因する評価基準の不明瞭も挙げられます。
獣医師の初任給
獣医師という職業は、大学院での獣医学専攻後に国家試験に合格し、獣医師として働くことが認められます。その獣医師の職業に就く際の初任給について考えるとき、卒業年次や雇用形態、地域や職場環境の違いにより、その額はかなり幅広い範囲になります。所定のスキルや知識、経験を持つプロフェッショナルな獣医師がどの程度の初任給を期待できるかについて、以下で詳しく説明していきます。
獣医師の一般的な初任給の詳細
獣医師の初任給はその職業を志した理由やスキル、経験に差があることにより、非常に大きな範囲に広がっています。そして、職場環境や給与体系も影響します。病院やクリニックで働く場合、一般的に新卒の初任給の平均額は25万~35万(稀に40万などもある)ほどです。ただし、これはあくまで一般的な数字であり、雇用形態や働く場所、職務内容によって、この給与は上下することもあります。
※参考:VetAgent調べ
初任給に影響を与える要素
初任給に影響を与える要素として主に考えられるのが、地域、雇用形態、経験、専門性です。地域によりますと、都市部と地方では求人の数や需要が異なり、これにより給与に差が出てきます。雇用形態では、正社員と契約社員、アルバイトでは初任給が異なります。
また、特定の専門知識や技術を持つ獣医師は稀であり、貴重な人材とされるため、高い初任給を得ることができます。また、臨床経験の豊かさは獣医師として求められるスキルの一つであり、それがあるかどうかも初任給に影響を与えるといえるでしょう。以上のように多くの要素が初任給に影響を与えているのです。
経験年数による獣医師の年収変動
獣医師における経験年数と年収には密接な関連性があります。新たに獣医師としてのキャリアをスタートさせるとき、自然と低めの年収からでしょう。しかし、経験年数を重ねていくことで、その専門性が一層深まり、価値ある診察を実現できるようになります。その結果、年収に反映されていきます。
獣医師の経験年数と年収の相関
獣医師という職種は、経験と知識が直結する特性があり、新人獣医師とベテラン獣医師では得られる年収に差が出てきます。新人の獣医師の年収は平均的に300万〜500万円程度ですが、10年以上の経験を持つ獣医師の年収は1,000万円程度になる場合もあります。経験年数の増加とともに獣医師のスキルも上達し、より高度な医療行為が可能となり、それが直接年収に反映されます。
※参考:https://shigoto.mhlw.go.jp/(年齢別の年収グラフを見る)
また、専門性の高い診療や手術を行うことで、更なるスキルアップや知識の習得が必要ですが、それが評価され年収へと反映されます。これは、経験年数と年収の間に直接的な相関関係があることを示しています。
年収上昇のためのキャリアプラン
獣医師として年収を上げるためには、経験年数を重ねるだけでなく、個々のスキルや知識の深化、専門領域の開拓も重要です。例えば、普通の獣医療だけでなく、専門的な病気の診療や手術を得意とすることで、一般獣医師以上の価値を提供できます。また、一般的な診療だけでなく、ペットの行動学や栄養学についての知識も深めることも効果的です。これらの専門知識を持つことで、自分自身の医療価値を高め、結果的に高い年収を得られるでしょう。
また、重症例に対応できる獣医師ほど給与も高くなる傾向にありますので、獣医療のスキルや知識を深めるためにも、他の獣医師や関連専門家とのネットワークを作り、最新の情報や知識を得ることや学会などに積極的に参加することも有効です。これにより、より効果的な治療方法や新たな診療領域についての知識を得られ、結果的に年収を上昇させることが可能になるでしょう。
獣医師の年収アップのための転職
私たちの生活には、動物たちが密接に関わっています。そのため、獣医師という職業はこれからも社会的な需要が見込まれる職種です。しかし、獣医師の年収が思うように上がらないという悩みを持つ方も少なくありません。そうした中、転職は年収アップ、キャリアアップに有効な手段であると言えます。転職により新しい職場環境や新しいチャレンジが待っているでしょう。
転職を検討するべきタイミングとは
あなたが転職を考えるべきタイミングとは、どのような時でしょうか。まず、自身の年収が業界平均よりも低いと感じた時、または、十分にスキルや経験を活かせていないと感じた時、これらが転職を検討するべき大きなタイミングと言えるでしょう。さらに、自己の成長が止まったと感じた時、新たな挑戦をしたいと思った時も転職の検討タイミングとなります。
一方、長期的なキャリア設計において、必須となるスキルや資格を身につけるためには転職が必要な場合もあります。例えば、ある特定の獣医科学の専門知識を習得するためには、該当の診療科に所属する病院への転職が必要な場合もあるのです。
転職を成功させるためのステップ
転職を成功させるためには、まず、自分の将来のビジョンの明確化が求められます。どのような獣医師になりたいのか、どんな環境で働きたいのか、自身の希望を明確にしておくことが大切です。次に、自分の現状の能力、経験、スキルを客観的に把握し、それを活かせる新たな職場を見つけることが必要となります。
また、新たな職場で求められるスキルや資格があれば、転職前に取得しておくと良いでしょう。そして、転職活動を始める前には、履歴書の更新、面接対策も忘れてはいけません。
最後に、具体的な転職活動ですが、まずは情報収集から始めることが大切です。ネットでの調査、転職サイトやエージェントを活用するなど、多角的な情報収集を行ってください。そして、自分自身の価値を理解し、それをアピールできるように準備をしていきましょう。成功のためには、自分自身の価値を最大限に活かすこと、そして、新たな環境への適応能力も求められます。はじめての転職でも、しっかりと準備をすれば成功に近づくはずです。
地域による獣医師の年収の違い
獣医師の年収は、場所による差が非常に大きいというのが現状です。都市部に比べて地方では少なく、また、国内外でも差があります。日本国内外で活躍する獣医師の事例やその年収について、具体的な数値と共に詳しく見ていきましょう。
主要都市と地方の獣医師の平均年収比較
都市部と地方では、若干ではありますが地方の方が平均給与は高い傾向にありそうです。理由として都市部には動物病院の数が多く、働く選択肢が豊富で非常勤で働いている人も多いため相対的に低い傾向にあるといえそうです。非常勤は時間に融通が利く反面、給与の面では常勤に比べて低くなることが多いです。
一方、地方では動物病院の数が都市部より少なく、獣医師の勤務選択肢も制限されます。そのため、ほとんどの獣医師が常勤で働くことが一般的であり、これが平均年収を押し上げる要因となっています。さらに、地方の基幹病院では、集約された症例を扱うことが多く、専門的な治療や手術が求められることから、獣医師の技術や経験が高く評価され、給与もそれに応じて高額に設定される傾向にあります。
このように、都市部と地方では獣医師の働き方が大きく異なり、それが給与の地域差に直結しています。都市部では選択の自由が給与の低さをもたらす一方で、地方では限られた選択肢と専門性の高さが給与の高さを支えているのです。獣医師としてのキャリアを考える際には、これらの地域特性を理解し、自身のライフスタイルやキャリアプランに合わせた勤務地選びが重要となります。
獣医師の待遇とライフスタイル
獣医師という職業は、ペットや動物たちの健康を守るために不可欠な立場です。そのため、社会的な評価は高く、待遇も悪くありません。しかし開業医として独立する場合や公務員として働く場合等、働き方や職場環境によりそのライフスタイルは大きく異なるのです。年収だけではなく、労働時間、休日、福利厚生等、待遇とライフスタイルを詳しく見ていきましょう。
獣医師の労働時間と休日
勤務形態によって獣医師の労働時間や休日は異なります。開業医の場合、病院の運営を自己責任で行うため、長時間労働となることが少なくありません。また、急な診療依頼が入ることも多いため、休日にも対応を求められることもあります。それに比べ、公務員獣医師や大学の教員など、定時制の職場では労働時間や休日がしっかりと設けられ、プライベートも確保しやすいのです。一方、企業勤務では、会社の福利厚生に準じた労働時間や休日となりますが、稀に夜間や休日に出勤を求められることもあります。
獣医師の福利厚生と待遇
一口に獣医師といっても、その業種や職場によって福利厚生や待遇は異なります。開業医では、待遇面では一定の自由度がありますが、一方で病院経営に伴う厳しい経済状況や患者獲得の競争が待ち構えています。しかしその一方で、自己のビジョンや思いを形にする喜びもあります。
公務員獣医師や大学の獣医師の場合、安定した待遇と充実した福利厚生が魅力です。実際、厚生年金や雇用保険などの制度が整っており、将来にわたる安定があります。また、大学の獣医師は、研究や教育に従事することも対象となるため、自己の専門性を深める機会にも恵まれています。
企業で働く獣医師の待遇や福利厚生は、その会社の規模や業績によりますが、一般的にはボーナスや昇給が期待でき、また健康診断や保養施設の利用など、福利厚生も充実しています。ただし、企業の業績次第でその待遇が左右されることもありますので、働き方を選ぶ際の一要素として考慮すると良いでしょう。
まとめ
獣医師は幅広い知識や高い技術を求められているにも関わらず「人間の医療職と比較して年収が低い」ということが、「獣医師の年収が低い」と感じてしまう理由の一つに挙げられます。
獣医師の年収は勤める病院の規模によっても人件費やスタッフを育成するためのコストもかかってきますので勤務する動物病院ごとに違いがあり、地域や雇用形態などによっても変化してきます。独立開業する場合もうまくいけば高い年収を得ることができる場合もありますが、開業資金や設備費用など先に多くのお金が必要となります。
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