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水族館で働く獣医の仕事内容とは?年収や水族館獣医になる方法も紹介

水族館で働く獣医の仕事内容とは?年収や水族館獣医になる方法も紹介

水族館で働く獣医は、海洋生物の健康を守り、水族館を支える重要な仕事を担っています。魚類やイルカ、クジラなど多様な生物の診療・管理を行うこの職業には、獣医学の専門知識だけでなく水族館特有のスキルが求められます。水族館の獣医には大変なことも多いですが、やりがいも大きいです。

この記事では、水族館で働く獣医の具体的な仕事内容を紹介します。さらに水族館獣医になるための4つのステップや年収についても解説しますので、水族館で働く獣医を目指す方は、ぜひ最後までご覧ください。

水族館で働く獣医は主に2種類

水族館で働く獣医は大きく以下の2つにわけられます。

・水産獣医師
・海獣医師

それぞれの役割や仕事内容について見ていきましょう。

水産獣医師と海獣医師については、こちらの記事でも詳しく解説しています。

魚の健康を守る水産獣医師と海獣医師について

水産獣医師

水産獣医師は、魚類や甲殻類などの水生生物の健康を守る専門家です。主な仕事は、これらの生物の健康を維持し、病気の治療と予防にとり組むことです。水族館や養殖施設、さらには研究機関など、さまざまな場所で活躍しています。

水産獣医師には、基本的な獣医学の知識に加えて、水産獣医学に特化した専門知識と技術が求められます。そんな水産獣医師として働くには、養殖場や水族館での研修が非常に重要です。研修を通じて実際の業務で必要なスキルを身につけ、経験を積んでいきます。

海獣医師

海獣医師とは、海洋哺乳類(例:イルカ、シャチ、アザラシ、クジラなど)や海鳥に関わる獣医師のことです。主な仕事は、海洋生物の健康維持、病気の治療・予防です。さらに、不調がある海洋生物のリハビリテーションや野生生物の保護、環境保全などにも従事します。

海獣医師の職場は水族館だけでなく、野生生物の保護区、海洋公園、動物救護センター、研究施設などさまざまです。教育や啓発活動を行う海獣医師もおり、一般の人々に海洋生物保護の重要性を広く伝えます。

水族館で働く獣医の5つの仕事内容

水族館で働く獣医の5つの仕事内容

水族館で働く獣医の仕事は多岐にわたりますが、主な仕事内容は以下の5つです。

・魚類・海獣類の健康管理
・病気やケガの診察・治療
・掃除・エサやり
・野生動物の保護・繁殖
・お客様への対応やショーの出演

どの仕事も、水族館の生き物たちと来館者にとって欠かせない業務です。それぞれの仕事内容を紹介します。

飼育(掃除・エサやりなど)

水族館で働く獣医は、水族館にいる生き物の世話もこなします。毎日、担当する生物の掃除やエサやりを行い、健康に過ごせる環境を整えます。とくに新米獣医師のうちは、こうした飼育業務が中心になるでしょう。単なる雑務のように思われがちですが、世話をしていく中で、動物の習性や個体ごとの特徴が理解できるため非常に重要な仕事です。

また、日々の飼育業務中に生き物たちの些細な異変や不調を早期に発見できることもあります。すぐに適切な治療や予防措置ができるため、生き物たちの健康維持にもつながります。

さらに、飼育業務を通じて飼育員やトレーナーと密にコミュニケーションをとり、チーム全体で連携する体制を築くことも可能です。これらはすべて、生き物たちの健康を守るための重要な基盤となるのです。

健康チェック・管理

展示されている海洋生物の健康管理も、水族館で働く獣医の主な仕事です。日々、担当する生物たちの様子を細かく観察し、わずかな異変も見逃さないよう注意を払います。表情や人への接し方、同じ水槽内の仲間との距離感、そして普段の動き方など、些細な仕草から多くの情報を読みとる力が求められます。

魚類や海獣類の健康診断は難しいものです。陸上の動物と比べても体調不良を外見から判断するのが難しいことが多く、さらに体調不良が明らかになった時点ではすでに手遅れになっている可能性もあります。そのため、毎日欠かさず健康チェックを行い、早い段階で違和感を発見することが何より大切です。

お客様への対応・ショーへの出演

水族館の獣医として活躍するためには、医学的な知識はもちろん、現場での豊富な経験も欠かせません。とくに新米獣医師のうちは、お客様の対応をしたりショーに出演したりして海洋生物について深く知っていくことが大切です。

お客様の対応には、展示された生き物について説明したり質問に答えたりすることも含まれます。真摯にこなすことで自身の知識を整理してさらに深められるだけでなく、海洋生物と関わる機会が日常業務の中から自然と得られます。

水族館のショーに出演することも大切な業務のひとつです。ショーを通じて海洋生物たちと密接に関わることで、各自の個性や健康状態をより細かく把握できます。これは診療を行う際の重要な知識となり、より適切で効果的な医療を提供することにつながるのです。

病気やケガの診察・治療

獣医の主な仕事は、水族館の生き物に病気やケガが見つかった場合、診察と治療を施すことです。生き物に現れた症状を診察し、適切な治療を施して回復を目指します。

海洋生物の診療には独特の難しさがあります。自然界では弱さを見せると捕食者に狙われるため、多くの海洋生物は不調を見せないことが多いのです。また、海洋生物は陸上動物と体の作りが異なるため、治療法もまったく違います。水中での診療には、特殊な技術や機器も必要です。

野生動物の保護・繁殖

野生動物の保護・繁殖も水族館で働く獣医の仕事のひとつです。水族館に勤務していると、まれに近隣の海岸に野生の海獣が打ち上げられることがあります。そんな傷ついた野生生物を保護し、自然に帰すために治療を施すのです。

生き物の傷が深く自然に帰せない場合は、そのまま水族館で飼育することもあります。その場合はリハビリテーションを行い、回復できるようサポートします。残念ながら命を落としてしまった場合は、病理解剖を行って死因を究明するのも獣医の仕事です。集めたデータは野生動物の研究をしている大学などに提供し、海洋生物の保全に貢献します。

さらに、絶滅が危惧されている海洋生物の繁殖研究にも取り組んでいます。水族館で働く獣医は、海洋生態系の保全に大きく貢献しているのです。

水族館で働く獣医の給料・年収

水族館で働く獣医の給料・年収

水族館で働く獣医の年収は、一般的な獣医と比べて低いことが多いのが現状です。

一般的な獣医の平均年収は685.7万円程度とされています。年収は経験とともに上昇する傾向にあり、50代になると1,000万円を超える人も多くなります。しかし、20代の獣医の年収は300〜500万円程度にとどまることが多いです。パートやアルバイトとして勤務する場合は平均時給1,800円程度で、勤務先の病院によって金額に幅があり1,300〜2,500円程度となっています。

水族館で働く獣医の年収は、一般的な獣医の平均年収を下回ることが多いです。これは、水族館で働く獣医の仕事が純粋な医療行為だけでなく、飼育やお客様への対応なども多く含まれているためだと考えられます。専業の獣医として勤務する場合と比べて、どうしても給与が低くなる傾向があるようです。

出典:https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/223

獣医の年収についてはこちらでも詳しく紹介しています。

獣医師の年収が低い理由!初任給から地域や経験年数による違いを解説

水族館で働く獣医になるための4つのステップ

水族館の獣医になるための4つのステップを紹介します。

  1. 大学の獣医学科を卒業する
  2. 獣医師国家試験に合格する
  3. 獣医師免許を取得する
  4. 水族館で研修を受ける

大学合格後、理想の水族館獣医になるために、あらかじめ道筋を理解しておきましょう。

1.大学の獣医学科を卒業する

水族館獣医として働くには、まず獣医師になる必要があります。そのためには、大学の獣医学科を卒業しなければなりません。大学では、基礎化学や生物学、解剖学、病理学、微生物学といった幅広い分野を学び、総合的な動物医療の知識と技術を習得します。

卒業後に水族館の獣医になりやすい特定の大学は、国公立私立を問わず存在しません。どの大学でも魚類や海獣について学ぶ機会は少なく、関連する科目としては「魚病学」程度のようです。

とはいえ中には、選択科目に水族館実習がある大学や、海洋生物に関する研究を行う研究室もあります。そのような大学や研究室を目指せば、水族館で働く獣医への近道となるでしょう。

日本には獣医学科を設置している大学が17校あります。

種類 大学名 都道府県
国立大学 北海道大学 北海道
帯広畜産大学 北海道
岩手大学 岩手県
東京大学 東京都
東京農工大学 東京都
岐阜大学 岐阜県
鳥取大学 鳥取県
山口大学 山口県
宮崎大学 宮崎県
鹿児島大学 鹿児島県
公立大学 大阪公立大学 大阪府
私立大学 酪農学園大学 北海道
北里大学 青森県
日本獣医生命科学大学 東京都
日本大学 神奈川県
麻布大学 神奈川県
岡山理科大学 愛媛県

大学で獣医学を学び、獣医師になるための準備を整えましょう。

獣医学部がある国公立大学についてはこの記事でも紹介しています。

獣医学部がある国公立大学はどこ?偏差値ランキングや大学の選び方をご紹介

2.獣医師国家試験に合格する

獣医学科を卒業したら、農林水産省が実施する獣医師国家試験に合格する必要があります。試験の実施は毎年2月。受験回数や年齢の制限がないため、何度でも挑戦可能です。

出典:https://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/zyui/shiken/attach/pdf/shiken-31.pdf

試験は、獣医療、獣医学、衛生学、臨床獣医学などから幅広く出題されます。過去5年間の合格率は69.9〜86.5%で、決して容易ではありません。獣医師を目指す人にとって、乗り越えるべき重要な関門のひとつです。

出典:https://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/zyui/shiken/pdf/kijyun_20140904.pdf
出典:https://www.maff.go.jp/j/press/syouan/tikusui/attach/pdf/240313-5.pdf

3.獣医師免許を取得する

獣医師国家試験に合格したら、獣医師としての資格「獣医師免許」を取得しましょう。獣医師免許は、農林水産省に交付申請を提出することで手に入ります。この手続きを完了し、獣医師名簿に登録されると正式に獣医師として認められます。

加えて、獣医師免許を取得した後も定期的な手続きが必要です。獣医師法第22条にもとづき、2年ごとに農林水産省への届け出が義務付けられています。この届け出を忘れると、免許のとり消しや業務停止のリスクがあるため、忘れずに提出しましょう。

出典:https://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/zyui/menkyo.html#a
出典:https://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/zyui/22.html

4.水族館で研修を受ける

獣医師免許を取得したら、水族館に就職して研修を受けるところから始まります。研修では、水族館の全体的な運営や各部門の役割について学ぶとともに、展示されている生き物たちの飼育方法を覚えていきましょう。さらに水槽内の水質管理や環境整備についても学び、海洋生物が健康に過ごせるための知識と技術を身につけます。

水中での診療技術や特殊な医療機器の使用方法など、水族館特有の獣医療技術を習得することも重要です。たとえば、大型の海獣類に麻酔をかける方法や水中での採血技術など、大学では学ばない技術も求められるでしょう。

知識と経験を積んだら、先輩獣医師の指導のもと、実際の診療や手術にも参加していきます。最初は観察や補助から始まり、経験を積むにつれて実際に診療を担当する機会が増えていきます。

研修を通じて獣医師としてのスキルを磨き、水族館で働く獣医としてのキャリアを築いていくのです。

水族館で働く獣医になるために大切な3つのポイント

水族館で働く獣医になるために大切な3つのポイント

水族館で働く獣医になるために、おさえておきたい3つのポイントを紹介します。

・学生のうちに実習・インターンに行く
・常に水族館の求人情報を調べる
・水族館のことをよく知る

立派な獣医として活躍するために大切な心構えを知っておきましょう。

学生のうちに実習・インターンに行く

学生のうちに実習やインターンに参加することは、水族館の獣医を目指すうえで重要です。水族館での仕事は、大学での実習だけでは十分に理解できない部分が多く、現場で得られる経験は多ければ多いほどよいです。実習やインターンで積極的に経験を積んでおくことで、将来水族館の獣医として働く際に大いに役立つでしょう。

また、水族館の獣医の採用は非常に競争が激しく、採用人数も少ないのが現状です。あらかじめ実習やインターンに参加して関係を作っておくことで、将来チャンスをつかむ可能性が高まります。

大学在学中に実習やインターンシップを実施している水族館を探し、積極的に参加することが大切です。たとえば、沖縄の美ら海水族館などでは飼育実習を行っているようです。実際の現場で貴重な経験を得られるでしょう。

出典:https://churaumi.okinawa/education/programtaiken/shiikuji/

常に水族館の求人情報を調べる

水族館の獣医を目指すなら、水族館の求人情報を常にチェックしておくことが大切です。求人サイトを利用するのはもちろん、水族館に直接問い合わせたり、大学の先生に聞いたりして、幅広く情報を集めましょう。

水族館の獣医師の求人募集は非常に少なく、募集があったとしても採用人数はごくわずかなことが多いです。多くの水族館では空きが出た際に募集をかける形をとっていますが、そもそも空きが出ることがほとんどありません。

そのため、常にアンテナを張り巡らせ、求人情報を見逃さないことが重要です。少ないチャンスを逃さないよう、日ごろからしっかりとチェックしておきましょう。

海洋生物への愛情と仕事への情熱をもつ

水族館の獣医として働くためには、海洋生物への深い愛情と、仕事への強い情熱が欠かせません。

診療や治療はもちろん、緊急時の対応や環境管理、さらには研究活動など、幅広い仕事をこなす必要があります。これらの業務に真摯に向き合い、常に最善を尽くすためには、強い使命感と情熱が必要です。

水族館の獣医は魅力的な職業ですが、同時に生き物を相手にするという難しさや厳しさも伴います。だからこそ、海洋生物の健康と福祉のために尽力したいという強い気持ちが、日々の業務を支える原動力となるのです。

海洋生物を守るために水族館獣医として活躍しよう

水族館の獣医は、海洋生物の健康を守るために重要であり、やりがいのある職業です。魚類から海獣類まで多種多様な生物と関わり、診療や健康管理、飼育環境の整備、研究活動など、幅広い仕事をこなします。

水族館で働く獣医になるには、獣医学部を卒業後、国家試験をクリアして水族館での研修を受ける必要があります。水族館の求人は少なく、年収は比較的低いことが多いですが、ここでしかできないやりがいのある仕事です。ぜひ、専門的な知識と技術、そして海洋生物への深い愛情が求められる水族館の獣医を目指してみてください。

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